君が笑うなら
この声の主は菜穂でも母でもない。
外から聞こえた声である。
思わず窓を開けて、外に視線をやる。
真っ暗な道に、ライトが照らされている。
一見何もないように見えたが、意外と小さなごみくずなどが落ちていたりするものだ。
まあ、それはどうでもいいのだ。
明るいうちに人々が汚して行っただけで、今は静かだ。
まれにバイクや車が通ることはあっても、徒歩でいる人はいないに等しい。だって夜中だから。
昼間になればそれなりに人通りもある。
もっとも、夢遊病といわれた菜穂は、夜中にも歩いているのかもしれないが。
詳しくは聞かなかったが、(一応は)寝ている間何をしていたのかかなり不安である。
それはおいといて、声の主のほうに話を戻すと、その声を出したのはとある青年だった。
何に驚いたのかというと、何もない。いや、何もないところで転んだのだ。
その人物に菜穂は気がつくことなく、菜穂は窓を閉めた。
その人物と会うのは、すぐ先の話になる。