君が笑うなら
「じゃあ、中でお茶でもしようか」

「はいっ」

会話はそれで終わり、車の中でめぐりめぐる風景を見て、菜穂は過ごした。

いつも普通に見ている風景なのに、車の中だというだけで少し違って見えた。


しばらくして、二人は津野田邸へとたどり着いた。

前回のように出迎えを受け、今度は別室へと案内される。その部屋は写真だらけの、シンプルな部屋だった。

「ここ、僕の部屋」

「……写真本当にお好きなんですね」

「うん。ああ、ため口でいいのに」


そうは言われても、出会ったばかりなうえ、相手はお坊ちゃまだし。ひとつ年上ってだけでも、学校では敬語を使わないとにらまれるし。


「できるだけそうしま……する、よ」

「ありがとう。僕って友達少ないから、友達になってくれるとうれしい」

志和は悲しげな瞳でふっと笑う。
実際どうだかは知らないが、本人がそう思っているのは確かなようだ。口元は、張り付いたように口角が上がったままだ。

「もちろんですよ!あ、もちろんだよ!」
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