君が笑うなら
写真は、主に自然物を写したものばかりだった。花々や空が私を見てといわんばかりに主張して、飾られていた。

そんな中に、人物の写真が、数枚。志和の両親に見える人物や、友達とのスナップ。それに混じって、見覚えのある人が……。

「この人、朝の」

美少女に見えるそのルックスは、間違いなく朝であった青年だった。年齢は、少し今より幼いだろうか。


「兄さんを知ってるの?」

ゆっくりと、不思議そうに志和は聞いた。思わず志和と彼を比べてみる。……似ていない。

志和も彼も美形だが、志和のすっきりとした顔立ちに対して、彼は甘い感じだった。いつの時代かしょうゆ顔にソース顔とか言ったらしいが、それぐらい、差があった。


「兄さん……?」


呼び名が兄さんでも、兄弟ではない可能性は大いにあった。

それにしても志和のリアクションは周りが知らないことが当たり前だといわんばかりだったし、普通の兄弟なら周りが知っていて当たり前ではないのだろうか。

「似てないって、思ったでしょう?」
 やっぱり、志和は笑っていた。


「え、あ」

「ごまかさなくていいよ。血、つながってないし。ついでに言うと、僕も兄さんも正式な息子じゃないから」

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