君が笑うなら
「あ、私は、私は、光井菜穂です、独身です!」
「菜穂ちゃん、ね。……知ってるけど」
「はいっ」
菜穂には、最後の一言は聞き取れなかったが、それは放置した。
そうすると、笑顔を崩さずに志和はメイドを数人呼びつけたかと思うと、一人一人に挨拶をさせて、菜穂を案内するよう頼んだ。
「菜穂様」
メイドの1人が深々と頭を下げながら、歩みでてきた。
広い廊下には、美術の教科書で見たような、華やかな絵画に混じって、きれいな写真が数枚、高そうな額縁に入れられて飾られていた。