異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「で……」


ひととおり取り乱した後、コホンと咳払いをして場を仕切り直す。


「ヒスイ、あなたさっき何か言ってた? あの男がなんかの血を引くだとか」

《そのことか》


ふわり、と跳んだように座り直すヒスイ。彼女は黙ってれば完璧な美女……大和撫子(やまとなでしこ)なんだけどなあ。


《そういえば言うたか。あやつは大和の民の血を引いておる、と》

「!」


はっきりと断言されて、立ち上がりたくなったけど。痛みがあって難しい。顔を歪めながら、ヒスイに問いただす。


「大和って……要するに、日本人の血を引いてるってこと?」

《人の世の21世紀では、そう呼ばれる国の民ということじゃな》

「……!」


あの……ディアン帝国第1皇子が、日本人の血を引いてる? どういうこと? あたしより前に、日本人がこの帝国に現れたってこと?


もしかすると……今の皇帝のお妃様が? そうならば納得がいく。あの皇子の年は25辺りだと思うけど、それより前なら少なくとも30年ほど前にこの帝国にやって来たってことだよね?


(秋人おじさん以前に、この帝国にやって来た日本人がいる?)


けど、それならと納得できる部分がある。初対面から異世界の言語である日本語をパーフェクトに話せる人たちの多さ。ところどころビミョーな意味だけど、確実に日本語が元と思われる単語。


もしも30年前に日本人が来て広めたなら、普及してもおかしくない長さの時間だ。


帝国に……日本人がいる?



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