異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《それより、そなたの傷もだいぶ癒えたのう。わらわの助けもあるが、後はあの霊薬を飲めば助けになろうぞ》
ふわり、とあの男の置いていったビンが浮いて、手元に落ちてくる。慌てて受けとれば、ヒスイはニヤリと笑う。
《なにやら面白いことになりそうじゃから、すべては教えてやらん》
「は、なに言って……」
《長く生きると退屈でな。面白いことに飢えておるのじゃ。ふふふ》
な、何ですかその小悪魔めいた含み笑いは? なんだか悪い予感がしますけど。
《とにかく、その霊薬を飲め。さすれば、傷は癒えよう……大切にするのじゃぞ》
ふわり、とヒスイは体を浮かせると、そのままフッとかききえる。その直後、勾玉が微かに光を放つと、何もなかったかのように静かになった。
「ちょっと……急になんなのよ?」
手のひらで勾玉を持ち上げてみても、何の反応もない。
バタバタと大きな足音が近づいてくると、バタン! と勢いよくドアが開いてすぐロゼッタさんに抱きしめられた。
「ナゴム! ヨカタ、イノチ、アッタ!!」
「う、うん……ごめんなさい、心配をかけちゃって」
ロゼッタさんは珍しく、涙を流してた。気丈な彼女が泣くなんて……と胸が痛む。
たとえ彼女が義務や何かで着いてきてくれたのだとしても、実直な彼女の素直な気持ちまで疑うなんて。いくらあたしが巫女じゃなかったとしても、しちゃいけないことだった。
「ありがとう……ロゼッタさん」
とんとん、とあたしは彼女の背中を叩き返した。