異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ロゼッタさん以外にキキさんとライベルトさんが部屋にやって来た。キキさんに八つ当たりの件を謝ると、大したことありませんと微笑まれた。ええ人や!
「あれだけの重傷だったのに、とお医者様が不思議がってましたわ」
意識を取り戻したから、と診察を受けたのだけど。外傷はぼぼ完治。体内のダメージも相当癒えてた。なんでも内臓まで損傷してたとか……本当容赦ないわ、あの皇子は。
「私たちは一度セイレスティア王国に戻るが、こちらはいつでもあなたを保護する用意があることは忘れないでくれ」
それと、とライベルトさんは眉を寄せた。
「……ディアン帝国内の争いが活発化している。あなたが兄上に着いていくなら、否応なしに巻き込まれる。それでも行くのか?」
「乙女に二言はない、って言ったでしょう。へーき、へーき。あたしはしぶといよ。庶民のど根性、見せてやるから」
ライベルトさんとキキさんにピースサインを出して、ニカッと笑ってみせた。やれやれ、と呆れた顔でため息をつかれてしまいましたが……気にしない、気にしない!
「それじゃあ、元気で。また会えるといいですね」
キキさんは名残惜しそうだったけど、あたしはコソッと耳打ちしてあげた。
「早くライベルトさんにコクりなよ! こういう人はゴリゴリ押さないと気付かないにぶちんだからさ」
「な、なっ……何を言って……」
ぼっ、と発火しそうなほど顔を赤らめた彼女に、にひひと笑ってみせた。
「じゃ、がんばれ!」
パン! と背中を叩いて送り出す。
あたしも頑張るから、あなたも頑張れ! と。
後ろ楯のない庶民出身の侍女と、帝国皇子の血を引く貴族さまの恋路。あたしは巫女と崇められながら、何の力もない女子高生。きっと、どちらも困難な道だろうけど。頑張ればきっと、道ができる。そう信じて。