異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第6関門~あたしは従僕でございます。
胸が隠れる少しゆるめの黒い半袖シャツに、ポーチ付きの革のベルト。ショートパンツはカーキ色で、靴はしっかりとした編み上げの革製ブーツ。防具には、胸当てと肩当てもつけてる。膝も防具を当ててるから。ニーハイブーツみたいになっちゃった。
そんな旅装の上から丈の短めな白いマントを巻いてみました。
……で。
「また、思い切ってばっさりいきましたねえ」
気のせいか、レヤーが半目であたしを見てる。
「別に、いいじゃん。暑くてうっとおしかったから、ちょうどよかっただけだし」
あたしは短くなった髪を撫でて、へへッと笑う。レヤーはあからさまにため息を着くけど……。
「和さんのいた日本では、確かに昔より“女性はロング”って固定観念は薄れてますけど。よかったんですか? 綺麗な黒髪だったのに」
「いいって、いいって! 気分を一新したかっただけだし。ちょうどショートにしたかっただけだから」
ははっ、と笑った笑顔は自分でもわざとらしいと思う。だけど、空元気でも見せないとやってられない。
あたしがセミロングだった髪をばっさり切ってショートにしたのは、旅に出る男装(兼変装)のためと。
……セリスに抱いていたかもしれない淡い気持ちを捨てるため、だった。