異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
レヤーとともに、男が立っていた大通りに急ぐ。やっと着けば何かを投げて寄越したから、受け止めてみたら一枚のカードだった。
なんだろう? クレジットカード程度の大きさで、金属製に見える。読めない字がたくさん刻まれていて、疑問に思って男を見ると「身分証だ」とぶっきらぼうに言われた。
「アンタを、オレの従僕という身分にした。側仕えとして不足ないよう務めろ」
じゅうぼく? そばづかえ??
あたしの頭の中で理解しようとしても、ただ首を捻って唸るしかない。
「えっと……手助けすればいいのかな?」
「出来るなら、だがな」
まるで無理だろうと決めつけたような物言いに、頭に血が昇りダン! と地面を踏みしめる。
「やるよ! あた……ボクだって、できるんだからな!」
せっかく男装したんだから、これから男の子として振る舞わなきゃいけない。腰に提げた短剣の鞘を掴み、グッと握りしめる。
「ボクだって、がんばってやるからな!」
あらら、意外と才能あるかもあたし? と自画自賛していたら、男はフイッと背を向けて歩き出した。
「わっ……待って…くれよっ!」
いけない、いけない! 気を抜くとすぐに女言葉になる。旅をする以上、女だと不利だからと男装を思いついたし、巫女として見破られないための変装を兼ねてるんだから。