異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ロゼッタさんが、来ない。
ライベルトさんとキキさんには今朝お別れを言えたけど、ロゼッタさんは昨夜から姿が見えなかった。
もしかすると、無謀すぎるあたしにあきれて帰っちゃったかな? その可能性もあるだけに、はぁと息を吐いてゆっくりレヤーの歩を進める。
未練がましくもう一度だけ町の方を振り向く。やっぱりロゼッタさんもあたしから離れてくんだね……グスッ、と鼻をすすりゴシゴシと目元をぬぐう。
(うじうじしない! しっかりしろ、和。あたしは自分で選んだ道をいくんだから泣いてるヒマはないよ)
あと数歩で、関所を抜けて旅が始まる。そんな時。
「ナゴム!」
土埃を舞わせながら、猛然とロゼッタさんが走ってきたのは。
ロゼッタさんはだいぶ急いでたのか、髪が乱れ全身が砂まみれ。どうしたんだろう? と不思議に思えば、彼女が差し出したものを見て目を見開く。
それは――流砂で無くしたはずの、あたしが日本から持ってきたカバンだった。
「オソクナッタゴメン。ナゴム、ダイジダイジダッタから」
まさか――一晩中これを捜すために、ロゼッタさんはあの大量の砂を掘り起こしたの?