異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
どれだけの砂を掘り起こしたんだろう? ロゼッタさんの髪も肌も服も、荷物まで砂まみれ。いくら道具を使ったところで、すぐに掘り当てられるはずがない。彼女は昨日の昼から今まで……あたしのために一晩中砂を掘り続けてきたんだ。
ぽろっ、と涙がこぼれ落ちる。何の見返りも求めずに、ただ他人のためにそこまでしてくれる。彼女はそういう人だった。
きっとロゼッタさんにとって、あたしが本物の巫女であろうとなかろうと関係ない。彼女がそんな度量の狭い人ではないんだって、あたし自身が一番よくわかってたはずなのに。
「ごめん……ごめんなさい、ロゼッタさん。ありがとう……本当に、ありがとう」
日本とあたしを結ぶ唯一の証。この中には、みんなの写真を貼ったミニアルバムも入ってた。二度と見れないと諦めてたのに。ロゼッタさんの強い意思で、再びこの手に戻ってきた。
(あたしも……頑張るから。みんな、見守っててね)
「ナゴム、ワラウ。ミナ、シアワセヨ」
「うん、うん……そうだね」
“つらい時こそ笑いなさい”――秋人おじさんの言葉が、なぜか胸に鮮やかに蘇ってきた。