異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



ふわり、と着地したヒスイは文字を眺めて面白い、と含み笑いをする。


《このような異界に、雅なやつもいるものじゃ》

「……って、これ。日本語じゃん!」


あたしがなんで? と目を瞬かせれば、ヒスイは呆れたような顔を向けてくる。


《それもそうじゃろう。秋人以外の大和の民もこの異界へ来た気配がある。偶然は必然ともなり得るものじゃぞ》


ヒスイは光に手を翳すと、彼女の手のひらが同じく淡い光に輝き始める。パキ、と岩にひび割れが入ったと思うと――10mはありそうな岩が真っ二つに割れた。


「ええええっ!?」

《いちいち騒ぐでない。ほれ、ナゴム。そなたが取ってくるのじゃぞ》


ヒスイに促され、なんであたしが……どぶつぶつ言いながら、足を踏み出す。すると、いきなり金色の魔方陣が岩を中心に発現して、レヤーが弾き飛ばされた。


「な、和さん!」

「レヤー? 大丈夫!?」

《鳥のことはよい! 早く文を持ってくるのじゃ!》

「わっ、わわっ!?」


ヒスイに背中を押されたのか、勢いよく前に踏み出す。足がもつれそうになりながら、どうにか歩いて中心に向かう。


ヒスイが焦っているように見えるけど、なんでだ? と思いながら歩を進める。キラキラと金色の光の粒が舞い上がり、すごくきれい。


やがて見えてきたのは、水晶に入ったひとつの箱。たぶん、木でできてる。


それに手を伸ばした瞬間、箱が炎に包まれた。


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