異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ちょ、燃えちゃったよ!?」
《ためらうでない! 早く手に取るのじゃ》
「そんなむちゃくちゃな。火傷しちゃうでしょ!」
《そなたなら平気じゃ! 早くせねば燃えつきるぞ。そなたにとり大切なものじゃ、はようせい!》
「あ、あたしにって……わ、わかったわよ! 手にすればいいんでしょ」
トホホ、あたしはこんなのばっかり。体当たりで演じる役ですかって!
勢いよく燃える炎を前に、ゴクリと喉を鳴らす。せめて、と携帯してる水を腕にかけて、一気に腕を突っ込んで――反射的に引っ込めた。
「熱い! 思いっきり熱いじゃない」
《やけどはせぬ! しても治してやろう。はようせい!》
なんだろう? 妙に翡翠が焦ってる。いつも小生意気で人を馬鹿にしてるような態度なのに……。
(マジで大切なもの? あたししか取り戻せないなら……仕方ない)
「女は根性!」
自分でも意味不明な叫び声をあげながら、炎の中に腕を入れる。
(痛い! 熱い!!)
肌を焼く痛みと、ものすごい熱さが襲ってくる。ジリジリと熱に焼かれながら、木の箱を何とか手にして一気に引っ込めた。
「……っ」
あまりの痛さに涙目になりながら、箱をその場に落として腕を押さえた。