異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



《ようやった、和》


ヒスイが手を翳すと、暖かな風が腕にまとわりつき、驚いたことに痛みと熱が引いていった。


「あ、ありがとう」

《大事ない。文を取り戻した礼じゃ》


素直なヒスイはなんかちょっと調子が狂う……。


「和さん、大丈夫ですか?」


レヤーが慌てて駆けつけて救急箱を取り出したけど、平気としまわせた。


「どこも燃えてないし、火傷してない……」


肌や服をいくら眺めても、黒焦げや傷のひとつもない。


《そうじゃ。あれは本物の炎ではない。精神への攻撃ゆえに、痛みも精神的なものじゃ。だめーじを与えるには十分な仕掛けじゃったがな》


ふわん、と木箱が浮いてポトリとあたしの腕に落ちてきた。


《あの皇子に渡すがよい。ナゴムにも有用なものじゃが、あの皇子であれば十二分に活用できるじゃろ》


ふわあ、とヒスイはあくびをして目を擦る。


《やはり、異界での力の行使は疲れるのう。わらわはもう休むぞ》


ヒスイはふわりと飛ぶと、そのまま光の粒になってペンダントに吸い込まれていく。淡く輝いた緑色の勾玉は、しばらく点滅してから光が消えた。


「な、なんなのよ……もう」


あたしは呆気に取られるしかなかったけど。木箱はところどころ焦げてたけど、かなりの高級品って感じ。もしかすると漆塗りってやつ? 焦げ茶色で艶があり、刻まれた模様に嵌め込まれた虹色の色彩。


どこからどう見ても、日本製の箱に見えた。
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