異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ね、ねえ。これ……薪集めする時に見つけたんだけど」
「……箱?」
バルドに声を掛けてから差し出すと、彼は訝しげに木箱を眺める。
「あの……あなたの役に立つって言うから、見せた方がいいと思って」
「誰がそう言った?」
バルドにストレートに切り返されて、言葉に詰まる。まさか、ヒスイっていう御上さまがおっしゃいました……なんて。あたしとレヤー以外に姿を現さないひと(?)のことを持ち出しても、納得してもらえるどころか頭がオカシイと思われるだけだ。
「そ、それはその……」
レヤーです、と誤魔化せばいいのかもしれないけど、なぜかバルドに嘘はつきたくなかった。彼は裏表ない性格とは言い難いけど、ある意味自分に正直だ。そんな彼だから、変な嘘や偽りは簡単に見破られる気がして。
(ヒスイのこと……これから一緒に旅をするなら話した方がいいかな)
頭がオカシイと思われようと、彼に打ち明けようと口を開いた。
「あの……すごく言いにくいし、頭がおかしいと思うかもしれないけど。このペンダント……」
あたしは服の中から取り出したペンダントを外し、バルドの手のひらに載せてみた。
「これ、あたしのおじさんがくれたの。行方不明になる前に……それからずっと肌身離さず身につけてきたものだけど。
この世界に来てから知ったんだけど、翡翠之御上ってひとがこの勾玉には宿ってるみたい。
この木箱を見つけた時も、彼女が協力してくれて……その彼女があなたに見せた方がいいって言ってた」