異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「いや~助かりました。本当にありがとうございます」
翼でペットボトルを持ちベンチに座りながらペコペコ頭を下げる巨大な鳥は、本当によく出来てる。試しにクチバシを掴んで引っ張れば、イタタタ! と本気で痛がった。
「いたたたた! 痛いです。ぬ、抜ける~やめてくださいい」
鳥なのに目に涙まで浮かべてる。どんだけ精巧にできてんだろ?
「よく出来た着ぐるみですね。でも、暑くないですか?」
「き、着ぐるみじゃありませんよ。私はこれでも立派な成鳥なんです。だから……あただだだ! つ、翼引っ張らないで! 肩が抜ける!!」
巨大な鳥の体は暖かかった。体温があるってこと? それに、羽根も作り物にしてはよく出来てる。
「し、信頼なさってませんね? それじゃあどうしたら信じていただけますか?」
「翼があるなら飛べるでしょ? なら、あたしを乗せて飛んでよ」
な~んて、と言おうとしたのに。巨大な鳥はスックと立ち上がって「わかりました」とのたまった。
「空を飛ぶくらいわけないです。これでも数えきれないひとを乗せてきましたから」
立ち上がれば馬よりやや大きめの体を持つ大きな鳥が、翼であたしをひょいっと背中に乗せる。
「心配なら首にでも掴まっててください。ま、術でガードされてますから、落っこちる心配はありませんけど」
「あ、ちょっと待って! 荷物、荷物忘れちゃダメ」
「あ、そうですね。はい、どうぞ」
鳥はすぐに見つけ出してバッグを渡してくれた。あたしはそれを抱きしめたまま、まさかと半信半疑でいたけど――。
鳥が「いきますよ~」とのんびり声を掛けてきた次の瞬間、フワリと体が浮いた。