異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
今日は一番近い集落の水源を使う許可を得てる。ちょっと遠いけど、自力で探さなくて済むのはありがたい。
(だけど……)
そろそろ、お風呂に入りたい。そんな欲求が出てくるのは、年頃の女の子として仕方ないよね。
特にあたしはお風呂好きな日本人ですから。少々貧乏でもお風呂は毎日入ってたことを思えば、今の状況はちょっと我慢ならない。
時たま水で濡らしたタオルで体は拭けるけど、それだけ。髪の毛なんて洗えないし、毎日毎日汗や土埃で肌や服が汚れるのに洗い落とせない。1ヶ月間この状態ですから、結構くるものがありますよ。
ロゼッタさんはそんなに頓着してないし、鳥に至っては毛繕いで終わりだし。バルドは言わずもがな。
(せめて……髪が洗いたいよ)
いくら男装で短くしている髪の毛とはいえ、バサバサで埃や土まみれだし。日で焼けて艶もなくなってる。
これは自分のわがまま。ガマンすべきって解ってる。だから、思うだけで口には出さないし態度に表さないよう気をつけてきた。
大丈夫、我慢は慣れてる。おじさんが行方不明になってから我慢の連続だったから。自分を抑えていればいい。
はあ、とため息を着いて桶を持てば、ロゼッタさんが片方を持ってくれた。
「なごむ、ひとりはよくないよ。わたし、ついていくね」
「あ、ありがとう」