異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「わ、ホントにいいの? 嬉しい!」
1ヶ月ぶりにお湯が使える! ほんのちょっとでも、嬉しくないはずがないですって。
「なごむ、ホントにいい?」
なぜか、ロゼッタさんが眉を寄せたままあたしに訊いてくる。コクコクと勢いよく頷けば、彼女は了承を伝えてくれたらしい。老婦人の顔が目に見えて明るくなった。
「それじゃ、夜。月が一番高い時に来てね、て」
「そっか……オッケー。ありがと」
思わずロゼッタさんの背中をばんばんと叩くと、彼女は苦虫を噛み潰したような顔をする。なんでだろう?
「ロゼッタさん、どうしたの? お湯が使えるのは嬉しくない?」
「なごむ、わたしはいけない」
「え?」
まさかロゼッタさんがそんなことを言うとは思わず、きょとんとして訊き返す。
「え、なんで? ロゼッタさんお風呂嫌い?」
「キライじゃ、ない。けど、わたし資格ないから」
「しかく? 資格って……どうして?」
「わたし、乙女じゃない」
「……ん?」
おとめ? オトメ? 乙女……?