異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
乙女って……ロゼッタさんも18だから、十分若いと思うんだけど。彼女の言いたいことが解らなくて、首を捻りながら食事の支度に取りかかる。
いつの間にかバルドも戻ってきていて、あたしのカバンから勝手にノートを取り出して眺めてる。幾ら注意しても聞かないから、もう慣れっこになったけどね。
今日は干し肉とハーブのスープと燻した木の実。1日動いた体からすれば全然足りないけど、食べられるだけましと自分に言い聞かせる。
「はい、熱いから気をつけて」
「ああ」
バルドはろくにこちらを見ずにカップを手に持つから、落とさないかハラハラするってば。
パラパラとページを捲るバルドに、そういえばとあたしは思いついたことを口にした。
「そういえば、このアラカ地域ってずいぶん男性が少ないんだね」
ピクリ、とバルドの眉が動く。本当に、何気なく出した言葉だった。日中調査した3つの地区のうち、このアラカだけは極端に男性が少なかった。ただそれだけのことだった。
「出稼ぎって理由が多かったけど……そんなに遠くまで行くほど経済的に困ってるようには見えなかったけど」
「……残っているのは、12歳以下の子どもか老人か病人か……」
バルドがアラカ地区の調査資料を指でなぞり、何事か考えている。気難しい顔をしたまま、顎に指を当てて。