異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「住民の暮らしぶりはどうだ?」
「あ、うん……どの家も、男手がない割には困ってなさそうだったよ。集落の真ん中には文字と計算を教える青空教室もあったり……そういえば、女性もおしゃれな人が多かったかな」
オシャレとは言っても現代日本からすれば知れたもので、天然石のアクセサリーをしたり、繊細なデザインの紐でワンピースを結んだり。髪の毛を結って髪留めをしたり。派手な靴を履いたり。そんなささやかなものだ。
けど、この1ヶ月以上辺境ばかり巡って質素な暮らしぶりの住民ばかり見てきたから、どこか違和感を覚えたのも事実。辺境ではどこも一杯一杯の暮らしで、市場で流通していそうなあんなオシャレな品なんて見る機会はほぼなかった。
そう……たとえば。部族長の妻等の権力者の妻なら、たまに見たけど。住民の女性ほぼ全員が何らかのオシャレをしてるなんて、今までにないケースだったから。何だか印象深かったんだよね。
そのことを話すと、バルドはますます眉間のシワを深くする。険しい顔で、何事か呟いた。
「確かに……不自然だ。調査する必要がある」