異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「あ、それでね。あたし、アラカでお湯を使わせてもらえるみたいだけど、行ってきていいかな?」


バルドに経緯を話してみると、彼は腕を組んであたしを見上げる。


「おまえ、自分が女として招かれたと考えてるのか?」

「えっ……そ、それは……」


自信がないなあ……とは思って自分の体を見下ろす。今はない胸を隠すために、ぶかぶかのシャツを着ている上にブラじゃなくタオルをきつく巻いて押さえてある。

もともと女性らしいとは言えない体だけど、ささやかなふくらみがなきゃまるっきり男の子だわ……。


バルドの無言の視線がそうだと思いっきり肯定してますよ。案外嫌みったらしい人だ。


「男性が全くいない中で招かれたって……やっぱしあたしが男だと思われたから?」

「さあな。自分の目で確かめてくるといい」


バルドはそう言いながら、短剣を持って立ち上がる。


「来い、訓練をつけてやる。素振りは済ませてるな?」

「あ、うん。ちゃんとやっておいたよ」


あたしは自分の短剣を確かめると、木刀を持ってバルドの後を追った。


一緒に旅をするようになってから、あたしが頼み込んで基本的な剣の使い方を彼に教わってる。力や身体能力から言えば短剣の方が使いやすいんだけど、そちらはあくまで身を守る方法で。いざ戦いとなった時に短剣はあまり役立たない。だから、剣を優先的に習ってた。


< 128 / 877 >

この作品をシェア

pagetop