異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
もちろん、あのバルドがあっさりあたしの頼みを聞いてくれるはずもなく、剣を教える教えないでかなりやり合ったんだよね。
実際、テストみたいな感じでまたボコボコにされた。何とかギリギリ合格ラインだったみたいで、翌日から容赦ない特訓が始まった。
最初の1週間はマジで死ぬかと思った。怪我人にいきなり腕立て伏せ1000回だの、素振り1000回だの。自分の足で往復100kmの道のりを1日でこなせだの。何の拷問ですか!? って叫びたかった。
けど、負けるもんかと歯を食い縛りノルマをこなした。石にかじりついてでもついてってやる! って、庶民の根性舐めるなという妙な意地で最後までやり遂げたっけ。
……で、それから半月以上経った今はさすがにそんな無茶なシゴキはないけど、習慣化した打ち込みや素振りなんかは時間を見つけてはやってる。相手をさせられたレヤーが泣くけど、気にしない。
「今日は、奇襲を掛けてみろ」
バルドから毎日違うお題が出て、彼が納得するまで徹底的に実戦さながらの訓練を繰り返す。これを毎晩毎晩付き合ってくれてるんだよね。
(月が高く昇るまでに終わらせなきゃ)
アラカ地区のおばちゃんとの約束を守らないと、とちらっと夜空を見上げる。バルドに向かって木刀を構えると、「行くよ!」と大地を蹴った。