異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
『よく来ました、○×△』
『は、はい』
赤いワンピースを着たあの老婦人が、にこやかに出迎えしてくれた。後半なに言ってるか意味不明だけど、やっぱりあたしのこと男の子扱いしてるよね?
(ロゼッタさんに頼らず、自分で乗り切るって決めたんだ。女は根性!)
習うより慣れろ。語学の学習は生きた生の言語に触れるのが一番。早くストラトス語に慣れたいあたしは、ロゼッタさんの通訳を断って一人でチャレンジすると言い切ってあった。
ちらっと後ろを見れば、ロゼッタさんが建物の影で頷いてくれる。大丈夫、あたしが巫女とバレてやしない。
老婦人に案内されて、石造りの建物に入る。すでに湯気が漂っていて、へえと感心した。もしかすると、温泉が湧いてるのかな? 1ヶ月ぶりのお風呂に入れるなら、来てよかった!
身ぶり手振りで「服を脱ぐのを手伝う」と言われたと解ったけど、慌てて知ってる単語を並べ立て、一人で脱げることを主張。何とか老婦人を脱衣場から追い出せた。
けど、なんだろう? 若い女の子がこちらを覗いては、クスクスと笑ってく。中には熱心に体を見られたり……。
“あんなので大丈夫なの?”とか何とかも聞こえたような。
(なんだろう? ま、気にしない、気にしない。女だとバレないうちにさっさと入っちゃおう)
さすがに素っ裸という勇気はありませんから、唯一持ってたバスタオルで体を隠す。 簾を捲ると、予想通りに並々とお湯が湛えられた浴槽があって、思わず歓声を上げちゃいました。