異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ちょ、ちょいと待ったああ!」
あたしは咄嗟に自由になる頭を美女さんに押し付け、何とか頭へのキスで済ませた。
『勇者様……接吻を拒むなど、一体どうなさいました?』
赤い髪の美女さんは、胸の前で両手を組んで心配げな表情を作るけど。あたしは彼女の顔をじっと見る。
(やっぱり……目が光ってる)
よくよく見てみれば、気づいたことがある。赤毛の美女の瞳が銀色に光っているということを。
いいえ、彼女だけじゃない。
ここにいる美女さんは一人残らず、瞳が銀色で淡く輝いてた。これだけ肌や髪の色がバラバラなのに、全員が同じ瞳の色でしかも光るなんておかしい。
それに、あたしが急にストラトス語を理解出来るようになった不可思議さ。これは明らかに、何かの力の影響としか思えない。
あたしが考えついたのは、誰かが魔法なり催眠術なり薬なりを使い、こういう状況を作り上げたということ。
(……つまり今の彼女達は、自分たちの意思でこんな行動を取ってない、ということ?)
となれば、美女達を操る黒幕がどこかにいるってことだよね。
「だ、だめだよ。目を覚まして!」
あたしは周りの美女達を見回して、彼女達に話しかけた。日本語だけど。
「こんなことしちゃ、いけないよ!こんな行きずりじゃなく、本当に好きな人との子どもを……お願いだから、目を覚まして!」
『勇者様をしっかり捕まえておきなさい』
あたしの訴えをかき消すように、凛とした声が言葉を被せてきたけど。どこかで聞いたことがある声音だった。