異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ハッと後ろを振り返れば、白いローブで顔を隠した人が浴槽の外に立ってた。湯気であまり姿がよく見えないけど、華奢でも背が高い。ローブからチラッと見えたものがあって、あたしは半ば確信を得た。
『占術師さま』
美女さん達がそのひとに向けて、湯船の中で一斉に頭を下げる。この人が、占い師?
(もしかしなくても……美女さんを操ってるのは)
あたしはバスタオルの端をギュッと掴み、その人物をキッと見据えた。
『あなた、占いしてる?』
『はい』
ハッキリと肯定の返答が来た後に、占い師は何らかの合図を送ったのか美女さん達はお湯から上がっていく。
美女さんが次々と湯殿を出ていくと、浴室はあたしと占い師の2人きりになった。
「……どういうつもりですか、あなたは」
「……」
黙ったままの占い師に向けて、あたしは遠慮なんてするつもりはない。だって……この人は。
「どうして……あなたがこんなことをしているの? セリス!」
あたしが名前を呼べば、ローブのフードがハラリと落ちる。そして見えたのは、サラリと流れる長い銀髪。
「……お久しぶりです、和」
別れる前と何一つ変わらない顔で、セリスはあたしに微笑んだ。