異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「どうして……なぜ、あなたは……」
1ヶ月以上ぶりの対面だけど、あまりに訊きたいことが多すぎて。いろんな想いが溢れてきて、言葉が出せない。
「なぜ……ですか」
セリスはなぜかローブを脱ぐと、薄手のシャツと革のズボン姿になってこちらへ歩み寄る。そして、そのまま湯槽に入ってきた。
ザバン、とお湯が揺れてハッと息を飲む。彼があたしに近づいてきてる、と気づいて無意識に後退りをした。
「こ、来ないで! それ以上、ち……近づかないで」
咄嗟に、バスタオルの下に隠していた短剣を抜いて構えた。威嚇のためで、本気でセリスを傷つけたかったわけじゃない。
だけど。
セリスはフッ、と笑うとあたしに手を伸ばしてくる。やめて! と短剣を動かそうとした瞬間、ビリッと腕に痛みが走って思わず短剣を落とす。
「いけませんよ、和。あなたはそんなことをすべきではない」
「だったら……近づかないで!」
「それは、無理です」
セリスの腕があたしの肩をトンと叩いた刹那、身体中から力が抜けてガクリと膝から崩れ落ちる。そのまま彼の腕に支えられ、セリスはあたしの髪にそっと触れてきた。
「綺麗な髪でしたのに……切ってしまわれたのですね」
ゆっくり、ゆっくりと指ですく動きは優しくて。本当に心配しているように聞こえた。
でも……。