異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



決着は、意外なところにあった。


ガキン、と不愉快な金属音を響かせて、セリスの持っていた短剣が弾け飛ぶ。そして、その隙をバルドが逃すはずもない。ザク、と鈍い音を立てて刃が突き立てられた。


――間一髪。セリスは髪の毛を身代わりに、バルドの刃を避けたけど。完全には避けきれなかったのか、剣の刀身が彼の脇腹をかすめてた。


「や、やめて!」


白いシャツが赤く染まった瞬間、頭が真っ白になって何かが弾け飛んだ。そして、気づけばあたしはバルドに抱きついて、全身で彼を止めてた。


「もう、勝負は着いたでしょ? これ以上無益な戦いはやめて!」


グッと力一杯彼の体に抱きついて、それ以上動かないようにと願う。しばらく沈黙が落ちて、水滴の落ちる音が何度か聞こえた後、バルドが剣を引く仕草をしたから。やっと彼から離れた。


「セリス!」


あたしは思わずセリスに駆け寄って手当てをしようとしたけど、後ろから意外な問いかけをされて足を止めた。


「……その男に、着いていくのか?」

「えっ?」


振り返れば、いつも以上に無機質な無表情で、バルドがあたしを見下ろしてきた。


なに……? まるで、あたしがその辺りのものみたいな。無意味な存在だとでも言いたげな視線。


「ど、どういうこと? バルド、言ってる意味がわかんないよ」

「その男……セイレム王国の第一王子、セリス・ド・セイレムに着いていくのか、と訊いてる」


バルドが出した言葉は、あたしにとって青天の霹靂だった。


< 139 / 877 >

この作品をシェア

pagetop