異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第8関門~トライアングル、スタート?
《おもしろい!》
「どわっ!?」
突如出現したヒスイに驚いたあたしは、万歳するような格好でお湯の中に倒れた。
《なんじゃ、ナゴム。そなたは湯の中で泳ぐのが好きじゃのう》
「ち、違う!あんたがいきなり出てきたからびっくりしただけだし」
その場にいなかったはずの人のどアップが来たら、誰だって驚きますよ!
あれだけ緊張感が高まってた湯殿の空気が、何だか気が抜けたようにぽわんとしてる。ヒスイが出てきたせいだろうな。
「あ~あ……もう、髪の毛までぐしゃぐしゃだ」
お湯の中で尻もちをついたままのあたしは、立ち上がろうとしたけど。目の前にスッと手が差し出された。
「どうぞ、お手を」
セリスが微笑んで、あたしに掴まれと促す。
「ええっ……と」
セリスを見上げる姿勢のまま、あたしは逡巡する。もしもこれが彼と知り合った当初なら、何の躊躇いもなくこの手を取っていただろう。
けれど、今は。
彼が偽りをあたしに語り、嘘をついていた――その事実が重くのし掛かる。
きっとセリスは自分の気持ちに嘘はついてない。けれど、出自という大切な部分であたしを騙した。
それが、何よりも悲しかった。