異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「和さん、あなたこそご自身をいたわってください。これだけおケガをなさっているのです。女性なら、お体を大切にされなくては」
さっきスルーされたにもかかわらず、セリスは付かず離れずの距離であたしを労ってくれる。
「あなたのことですから、かなりの無茶をなさっておられるでしょう? ……悪いことは言いません。あなたを利用するだけのディアン帝国よりも、わたくしの国においでください」
「利用……って、あたしが巫女らしいってことで?」
セリスからようやくディアン帝国についての話が出た。彼がディアン帝国にあたしを連れていきたくなかった理由が、今わかるの?
セリスはしばらく押し黙った後、やがて決意をしたように顔を上げてあたしを見据えた。
「……そうです。和さん、あなたがディアン帝国に期待された巫女の役割を果たそうとするならば、最悪命を失うでしょう……いいえ、その可能性が高いと言ってもいい。
何も知らされず、何もなせず。あなたが苦しむのを見たくはないのです」
セリスは揺らめく蒼の瞳を伏せると、悲しげな笑顔を浮かべる。
「あなたがどれだけ頑固者かは知っています。けれど、わたくしにも譲れないものがあるのです」