異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《ふむ、おもしろい》
ヒスイは口元に手を当てて隠してるけど。絶っ対に、ニヤリと笑ってるに違いない。
「何がおもしろいのよ!?」
《ふむ、そなたに自覚はないか……ますますおもしろい》
「なによそれ? あたしが鈍いとか言いたいの?」
カチンときたあたしは、遠慮なくヒスイに噛みつく。彼女は特に気分を害した様子もなく……どころか。あたしとバルドとセリスを交互に見て、お湯の上を楽しげに跳ねた。
《まだまだ教えてはやらぬよ。じゃが、ひとつだけ教えてやろうぞ。“とらいあんぐる”じゃ》
「トライアングル……三角形?それがどうしたの?」
訝しげに思ってヒスイを追求しようとすると、彼女は桜色の唇に手を当てて、内緒じゃと笑う。
《いずれ、わかる時がくる。それまで、後悔せぬよう己を磨くのじゃぞ》
ヒスイの象徴的な物の言い方は多少慣れっこになったけど。今のはもっとハッキリと説明して欲しい、と言おうとした時。湯殿の出入口が騒がしくなってきた。
(そういえば、ロゼッタさんは? あたしの護衛で入り口にいたはず。どうなったんだろう?)
もしも彼女が何らかのトラブルに巻き込まれたなら、あたしが助けなくちゃ。今まで彼女にはたくさん助けてもらったから。様子を見ようと浴槽から離れたところで、セリスに見つかって肩を掴まれた。
「和さん、いけません。あなたは下がっていてください」
「で、でも」
あたしが躊躇いながらも足を踏み出す決意をしたのは、ロゼッタさんを見捨てられないから。セリスは既に美女さんの魔法を解いてくれていたはず。
なら、あの騒ぎは一体なんだろう?
あたしの疑問はすぐに答えを見つけることができた。