異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第9関門~ニセモノ巫女と、あたしと。
アランダム子爵家はディアン帝国では中程度の貴族で、地方伯では割と大きいらしい。セイレスティア王国やセイレム王国との国境に接する領を賜っているだけあって、地方都市の中では武力が強いのだ――とは、セバスチャン(仮)さんの話。
南方では荒れ地が多いけど、セイレスティアに近い地域は割と湿潤な気候で、農作も盛んな地域らしい。それゆえに、様々な産業が興って相当な資産があるだとか。
「ですから、女神様をおもてなしするのに我がアランダム子爵家が選ばれる栄誉をいただいたのです」
アランダム子爵家のただっ広い客間で、あたしは延々と続くお坊ちゃんの自慢話にうんざりしてた。
たしかに赤茶色のレンガ造りのお屋敷は、今まで見たどの建築物より立派な五階建て。部屋数だけで200はあると言われて納得できる、西棟と東棟に分かれたお城。ぐるりと囲む塀も、堀もあって。手入れされた庭園は、まるっきりヨーロピアンガーデン。豊かさを象徴するように、ロボット型のメイドがいたりして。
お茶を持ってきたのが、空飛ぶロボットだった時はびっくりしましたわ。
けど、ねえ。
あたしとロゼッタさんだけがこの、30帖はあろう広さの客間に残され、長椅子に座りながらこのお坊ちゃんの自慢話に付き合って3時間は経つと思うけど。そろそろぶちギレていいですか?