異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



先触れのメイドさんが来る前に、バタン、とドアが勢いよく開いた。


《和、どうじゃ? どれすとやらも、悪くないのう》


現れたのは、実体化したヒスイ。彼女は薄いブルーのシフォン生地がふんだんに使われたドレスを身につけていて、髪は緩く結われ編み込みの上には花を模した白銀の髪飾りが輝いてた。


ほんのりと薄く色付けただけのメイクも、彼女のきめ細かく白い肌をひきたててる。


「おお、わが女神! やはり思った通りによくお似合いです」


お坊ちゃんはありとあらゆる称賛の言葉をヒスイに吐き、歯が浮く甘い台詞を連発してた。


《なごむ、ロゼッタ。そなたらも着替えるがよいぞ》


ヒスイはささっと寄ると、あたしにだけ耳打ちしてきた。


《そなたの希望通りにしてやったぞ、ナゴム。巫女とはバレたくなかろう? わらわが代わりにしばらく巫女を演じてやろう。ありがたく思うがよい》


――そう。あたしはたしかに自分を巫女だとか認められないし、その可能性も排除したくて、アランダム家に来るのを渋った。


そこで、ヒスイが身代わりの偽の巫女を演じてやる、と実体化したんだよね。実際、本物の人間と何一つ変わらない体になったからびっくりした。

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