異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「なごむ、どうかした?」
一緒に着替えるために着いてきたロゼッタさんが、不思議そうにあたしを見てる。そりゃ、服を手にした途端に固まって動かなきゃ、どうしたのかとも思うよね。
「ええっ……と、マジにこれ着なきゃいけないのか、訊いてもらっていい?」
間違いであって欲しいとの願いを込めて、ロゼッタさんからメイドに訊いてもらったんだけど。
「なごむ、これ着ろって! なごむの服汚れてダメダメだから、洗って手入れする~んだって」
「えっと……ほ、他の服は? あんまりひどくなきゃ、男性用の服でも貸してもらえないかな?」
どうしてもドレスなんて着たくなくて、ロゼッタさんには申し訳ないけど粘りに粘ってみた。
だって……ドレスなんて、やっぱり美人だったり可愛いひとでないと似合わないじゃないのさ~!
見事な地味顔のあたしが着たら、あら、不思議! 皆さんドレスしか目に入らない。まさしくドレスに“着られてる”状態になるってば。
女の子なら憧れを持つものかもしれないけど、どうもあたしは8歳で現実(リアル)を悟ってしまいましたからね。 自分が平均より下の容姿をしてるって。
あたしが着たらドレスが泣く、というかドレスがかわいそうだってばよ。 って主張をしてみましたが……。
ロボットではない生身のメイドさんが、にっこりと怖い笑顔であたしにおっしゃってました。
“ごちゃごちゃうるさいやっちゃ。これ以上ゴタゴタぬかすと、実力行使に出るぞ? アァン!?”
上の台詞はあたしの勝手な想像ですけどね。そう言ってもおかしくないほどの黒い何かが背後に見え隠れしてまして。
ちょっと漏れてきた絶対零度の冷気に固まったあたしは、いつの間にかひんむかれ手早く着替えさせられましたとさ。