異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ああ……あきまへん。ロゼッタさんの美人さに、ついつい彼女をガン見してしまいます。
こりゃいい目の保養ですな~とオヤジ化した思考で眺めてたら、なぜか彼女が沈んだ顔に……な、何ですか!? もしかしてあたしがヨダレでも出してましたか?と焦ったけど。
「これ……ディニに着せたかったよ」
「ディニ?」
初めて聞く名前だったから、誰なのか知らない。あたしの疑問はロゼッタさんの説明ですぐに解消した。
「わたしの、妹。2つ年下で、すごく、仲よかった。けど……10年前に……死んだ。生きてると、なごむと同じ」
「そう……だったの」
ロゼッタさんは普段からあまり自分の話をしないから、家庭の事情はあまり知らないけど。弟くん以外にきょうだいがいたなんて初めて知った。
しかも、あたしと同じ年だったなんて。10年前なら6歳……小学校に上がるか上がらないか、って年だ。ロゼッタさんは、そんなに幼い妹をなくしてたんだね。
だから、同じ年のあたしを心配してくれてるのかな? 妹とあたしをつい重ねて見てるのかもしれない。
「ね、ディニさんって……どんな人だったの? 明るかった? それとも、内気だったりした?好きな色とか食べ物とか……何が夢だったとか教えて?」
ロゼッタさんの妹にはなれないし、あたしに出来ることは多くないけど。大切にしてきた妹さんの思い出を共有することが出来たら、と思う。
悲しみや苦しみは、分けあえばきっと半分になるんだ、って。
もちろん、人の想いはそんな単純なものじゃないけど。ロゼッタさんの記憶が悲しいものより、楽しいものが多くなってほしいと思った。