異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
このお屋敷では庭園が素晴らしかった。だから、きっと咲いてる花も綺麗なものだと思う。
少しだけなら頼めば頂けるかもしれない。けど、今摘んだとしてディニさんのお墓に戻るには、きっとかなりの時間がかかるし途中で萎れてしまう。
なら、とあたしはロゼッタさんにとある提案をしてみた。
「うわぁ、すごい!」
正面玄関から馬車で入る時に車窓から見えた時もすごかったけど、こうしてちゃんと見ると、どれだけ素敵な庭園かがわかる。
きっと、一流の建築家だかデザイナー? とかのデザインなんだろう。緑があふれる中で、迷宮のような遊び心ある刈り込みや、小さな草原や森、小高い山をイメージしたようなスペースだとか。見てるだけで楽しくなってくる。
もちろん、花は百花繚乱状態ですよ。ピンク、赤、オレンジ、白、紫、黄色、Etc.ありとあらゆる色が溢れかえって、人工小川や池と相まって素敵。
小鳥や蝶が飛んでるなんて、この世界に来て初めて見た。それだけ豊かな土地なんだ。
「これだけあれば、ディニ喜ぶね」
ロゼッタさんも心なしか口元がほころんで、しゃがんで白い花を眺める。少しなら摘んでもいい許可をいただいてるから、花籠を持つといい花を選び始める。
あたしも花籠を持ちながら、胸元にある卵を撫でてみる。
(なかなか孵らないけど、何でだろ? もうかなり動くようになってるのに……)
そういえば、これをくれたハルトはどうしたんだろう? セリスの幼なじみと言うから、やっぱり彼もセイレム王国の人間なんだろうけど。
ハルトが武人というのは間違いない。彼の手には、剣を握るためのタコがあった。バルドと同じで……って、名前が似ててややこしいな。