異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



(そういえば、ハルトは秋人おじさんと顔がそっくりだったんだ……)


あの失礼なやつを思い出すだけでもムカつく。けど、あいつもあたしを騙してたんだよね。

セリスと2人して無知なあたしを騙して、楽しかったのかな?

セリスはあたしのためだ、と言った。あたしがディアン帝国に利用されないためだって。


ディアン帝国の望む通りに巫女を務めれば、命を落とす可能性が高い――と。そう教えてくれたけど。


あの時、一緒にいたバルドはその話を否定も肯定もしなかった。それならば、真実かどうかわからない。


(あたしがもしも本物の巫女だとして、いったい何をすればいいっていうの?)


旅の途中で偶然見つけた文は封印されていて、あたしが何とか取り出したけど。あの時、あたしでも何かの力を使えたってことかな? ヒスイは誤魔化して教えてくれなかったけど。


誰も、水無瀬の巫女の役割について教えてくれない。一様に口を閉ざしてる。


ロゼッタさんはただ、“帝国にとって無くてはならないお方だから、護るように”としか伝えられてないらしい。


(本当に、あたしが巫女なの? ヒスイは秋人おじさんの縁でこの世界に来たと言うけど)


いろいろと考えてみても、情報が少なすぎてぐるぐる回るだけ。はぁ、とため息を着いて池のほとりにしゃがみこむ。


ジッと見てると、知らない魚がスッと泳ぐのが見える。紫色だなんて珍しい。よく見ようと体を乗り出してバランスを崩し、縁の石から池に向かい落ちた――


< 163 / 877 >

この作品をシェア

pagetop