異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第10関門~偽りの婚約者になって。
ぽちゃり、と雫がおちる。
それが落ちた先は綺麗な澄んだ水で、波紋が広がり消えたあとは、磨きぬかれた鏡のように周りをよく映してた。
漆黒の中で無数に輝く光。宇宙にも見える空間は水面に反射されて、水を煌めかせてた。
あれ? とあたしは空を仰ぐ。この景色には見覚えがある。たしかこの世界に来て最初に訪れたのがロゼッタさんの集落で、眠りに落ちた時に夢の中でこの景色にいた。
(そうだ……あの時はたしか、誰かがいたんだ)
不思議と水面の上に立ったままのあたし。夢なら非現実的でもいっか、なんてあっさりと考えることをやめた。
そんなあたしの耳に、声が聞こえた。
“たすけて……”
え、と勢いよく周りを見回す。気のせい? でも、今たしかに聞こえたよね。
「あの……誰、ですか? どこにいるの? 助けてって……どうすれば」
“たすけて……”
あたしが声を張り上げても、その声は“たすけて”を繰り返すだけ。いくら目を凝らして探し回っても、見つからない。
いったい、どういうことなの?ぐるぐる回るだけのあたしに、もう一度声が聞こえた。
“たすけて……”
近い。
バッ、と振り返れば。そこには人の形をした水があった。氷や石じゃなく、本当に人の形を取った水。
「えっ……なにこれ?」
水の像は、髪の長い女性に見えた。そこから声が聞こえる。
ぽとり、と頬を伝う涙が水面を揺らした。
「あの……あなたは?」
あたしはためらいながら、その水の像に触れようとした。すると、途端に水の像が形を変えて、あたしの腕に絡み付く。
えっ? なにこれ!?
あたしが振り払おうとした瞬間――
水の像の顔が、見えた。
“たすけて――なごむ”
「せ、芹菜っ!?」
その顔は――
紛れもなく、日本の親友だった芹菜のものだった。