異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「ひどい~信じてくださいよぅ」


と両翼で顔を覆いながらシクシク泣くレヤー。

いや……馬より大きな鳥がヒロイン泣きしてもかわいくないんですけど。


なんだかどっと疲れを感じたあたしは、投げやりに答えた。


「あ~わかった、わかった。で? 石はなんて言ってるの」

「ぐすっ……はい。“そ・な・た・を・ゆ・か・り・あ・る・ち・へ・つ・れ・て・ゆ・く”……だそうです」


ゆかり? 知り合いにいないけどな、と考えながらそろそろと立ち上がる。間もなく夜明けが来る。今日は1日東京で遊んで……と予定を立てていた時。どくん、とペンダントが大きく跳ねた。


すると。キラキラと青白い光が無数に降り注いだかと思うと、それが円を描きあたしとレヤーを取り囲む。まるで檻のように閉じ込められ、出ることはかなわない。


「えっ……ちょ、何よこれ!?」

「し、召喚の魔方陣です。けど、何らかの影響を受けて……うわぁああ!」


浮かびかけたレヤーの翼を咄嗟に掴み、もう片手でバッグをしっかりと握りしめる。あまりに唐突な出来事で、レヤーも対処しきれないらしい。


「和さん、しっかり掴まっててください! 異次元に飛ばされないよう何とか制御しますから……ふおおおっ!」

「きゃああ!」


ゆっくりと浮いていった体が、急にジェットコースター並みのスピードで落ちていけば驚くに決まってますって。


ましてや、次の瞬間には高度何千メートルの高さで見知らぬ景色の中にいたんだから。


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