異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
ヒスイはそこまで話すと、口をつぐんで瞼を閉じる。
普段からあれだけ言いたい放題なくせに、なんで言葉を切るかな? よけいに気になるじゃん。
「ヒスイ、何なの? 最後まで言ってよ」
《わからぬからじゃ》
「は?」
ヒスイは閉じた目を開いて、あたしに困惑を浮かべた瞳を向ける。
《そなたの友がどうなっておるか、わらわにはわからぬ。いつもならば、手に取るようにわかるのじゃが》
「えっ……」
御上であるヒスイでも、芹菜のことがわからない?
「それって、どういうこと? ヒスイは誰がどこにいて、何をしているかわかるの?」
《無論じゃ。わらわはこれでも天上人なるぞ》
カチンときたのか、ヒスイはフワリと浮いて空中で正座をしつつ何やら唱える。
――で。
突然、あたしの座ってるベッドがふわんと浮き上がりました。それだけじゃない。窓が開いたかと思うと、そのまま飛び始めたし!
「ちょ、ちょっとおお~ぎゃあああっ!」
あたしはベッドの背もたれに必死にしがみつきながら、ただ叫ぶしかできませんて! ベッドで空中散歩なんて聞いたこともないわ。
ふわん、とひたすら上昇していったベッドは、お屋敷が一望できる程度の高さでようやく止まった。