異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



ヒスイはそこまで話すと、口をつぐんで瞼を閉じる。

普段からあれだけ言いたい放題なくせに、なんで言葉を切るかな? よけいに気になるじゃん。


「ヒスイ、何なの? 最後まで言ってよ」

《わからぬからじゃ》

「は?」


ヒスイは閉じた目を開いて、あたしに困惑を浮かべた瞳を向ける。


《そなたの友がどうなっておるか、わらわにはわからぬ。いつもならば、手に取るようにわかるのじゃが》


「えっ……」


御上であるヒスイでも、芹菜のことがわからない?


「それって、どういうこと? ヒスイは誰がどこにいて、何をしているかわかるの?」

《無論じゃ。わらわはこれでも天上人なるぞ》


カチンときたのか、ヒスイはフワリと浮いて空中で正座をしつつ何やら唱える。


――で。


突然、あたしの座ってるベッドがふわんと浮き上がりました。それだけじゃない。窓が開いたかと思うと、そのまま飛び始めたし!


「ちょ、ちょっとおお~ぎゃあああっ!」


あたしはベッドの背もたれに必死にしがみつきながら、ただ叫ぶしかできませんて! ベッドで空中散歩なんて聞いたこともないわ。


ふわん、とひたすら上昇していったベッドは、お屋敷が一望できる程度の高さでようやく止まった。


< 171 / 877 >

この作品をシェア

pagetop