異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《ここでは、誰も聞かれぬじゃろ》
「そりゃそうだけど! 物には限度ってものがあるでしょうが」
喚くあたしに、ヒスイは残念な子を見るような目で見てくる……なんかムカつくんですけど。
《やれやれ、偽の巫女を演じるわらわの苦労も考えよ。侍女がそのような粗野な言動では、わらわの品性が疑われる》
「そ、粗野で悪かったわね~どうせ、ろくな育ちじゃありませんから」
い~っ! と舌を出してやると、さらに半目で見られたよ。けど、気にしない。
「……って。それはともかく、芹菜に関して本当に何にもわからないの?」
《まったくではない。そなたの友の“気”はわらわも把握しておるでな》
そういえば、ヒスイはあたしが持つ翡翠の勾玉に宿ってる。秋人おじさんに貰った時から肌身離さず身に付けてたから、芹菜のこともよく知ってるんだよね。
《それゆえに、その気を辿れば居場所は掴める。じゃが……不思議なことに、糸が途中で切れてしもうておる》
「糸?」
《縁(えにし)というか、運命というか。そのようなものじゃわらわには繋がりが糸のようなもので見えるのじゃが、芹菜のものはこの世界へ伸び……途中で消えたのじゃ》
「ちょ、ちょっと待って!」
あたしは思わずベッドから身を乗り出してヒスイに詰め寄った。
「この世界へ……伸びてたって……もしかして、芹菜も……この世界に来てるってこと?」
あり得ない、あってはならないと思ってた。あたしだけじゃなく、唯一無二の親友まで大変な目に遭ってるなんて。
でも、ヒスイは。
《そうじゃ、おそらく芹菜もこの世界に“おる”じゃろう》
残酷な現実を、迷いなく肯定した。