異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そういえば、バルドさんが重要な話があるみたいですよ」
レヤーがその名前を出した瞬間、全身が心臓になったかと思うくらいに鼓動が跳ねた。
「バルド……が」
いつもと同じ名前、なのに。その音を自分で紡いだだけで、落ち着かない気分になる。
雨の中で、受けた二度のキス。耐えられなくて気を失ったけど……あれは、どういう意味だったんだろう?
“水無瀬の巫女は、力の行使には同じ血を持つ者の接触が必要”
同じ、血って。日本人ということ? ヒスイはバルドも日本人の血が流れてると言ってた。日本人との接触が、あたしの力の発現に必要ってことなのかな?
(で、でも……バルドがやった接触って……!)
かぁっ、と頬が熱くなる。絶対、顔が真っ赤だ。耐えられなくて両手で頬を隠しながら、バルドはどんなつもりであたしにキスをしたの? と気になった。
ただ単に、義務で唇を合わせただけ? けど、二度目のキスはそれだけじゃ説明できないよね。
(あたしが好きだってことは……まさか!)
「ない、ない! そんなの。あの無愛想男が、天地がひっくり返ったってあり得ない!」
「どうかしましたか?」
思わず叫ぶように首を横に振ってたら、レヤーが心配そうに訊いてくるけど。そういえば、彼に運んでもらってるんだって思い出し、恥ずかしさから穴に埋まりたくなった。
「う、ううん。なんでもない! それより、何の用事か聞いてる?」
「申し訳ありませんが、私は。バルドさんが直接お話になるそうです」
「そう……」
そわそわと落ち着かない気分になりながら、お屋敷の庭園に着いた途端、メイドさんに取り囲まれお風呂に強制連行された。