異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



あたしは腰に両手を当てて、ヒルトとやらとにらみ合いをした。


侍従長がどれだけ偉いか知らないけど、身分だとか何とかで初対面から見下されるのは我慢ならない。


先に目を逸らしたのは、呆れた顔でレイピアを鞘に仕舞ったヒルトだった。


「まったく……バルド殿下、いくら便宜上でやむ無しとはいえ、このような粗野で粗忽で野猿のような女を仮でも婚約者となさるのは容認できかねますね」


勝った! と胸を反らしてるあたしの耳に、なんか聞き捨てならない言葉が入ってきましたが!?


「ちょ、ちょっと! 誰がサルよ。あたしはこれでも一応人間なんですけど。勝手に退化させるな~!」

「サルの方がまだましですよ。きちんと躾をすれば、言うことを聞くようになりますから」


ヒルトはバルドが処理を終えた書類の束を持ち、サラリと憎らしいことをほざきやがりましたよ!


んが~! と頭に血が昇ったあたしだけど、後ろにいたロゼッタさんが脇をつついて冷静になれと促してくれる。


(はっ! そうだ。こんなことでいちいちムカついてたらきりがないじゃない。これから海千山千のタヌキを相手にするかもしれないし)


ヒスイからのアドバイスでもあったっけ。落ち着いてことに当たれって。


ふ~ふ~と荒い息を吐きながら深呼吸をして、気分を落ち着ける。よし! あたしは大丈夫だ。 と、ヒルトとやらをスルーしてバルドに目を向けた。


「あの、さっき何か言ってた? 婚約だとか何だとか。バルドの婚約者が決まったの?」


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