異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
どうやら、焦ってパニクってるのはあたしだけらしい。冷静な男性2人を目の前にして、自分だけが混乱してると痛感させられた。
一瞬頭が真っ白になるほどの衝撃があったけど、冷静になれば単なる偽装の話だって解る。
皇族の婚約という重大事なのに、バルドはまるっきり旅先での訓練を始めるような。いつもと変わらない様子で告げてきただけ。
(そ……そうだよね。バルドにとって、婚約だなんてひとつの手段なだけで。本当に、あたしと婚約したいだとか……あるはずないし)
だって、バルドがあたしを好きだとか。そんなの絶対あり得ない。ヒルトの言い分を借りると、粗野で粗忽なあたしを好きになるだとか……。天地がひっくり返ったってないじゃん。
日本にいた時だって、告白どころか声をかけられたのも、後ろ美人で勘違いされたから。必ずブスだとか言われたあたしが……好きになってもらえるなんて。絶対、絶対ない。
ポロリ、と涙が勝手に落ちたけど。急いで手のひらで拭うと、わざと明るい声でバルドに言ってあげた。
「な、何の冗談? いくら仕方ないとは言っても、こんなサルを婚約者なんかしたら。バルドが困るだけだよ。へ~き、へ~き! あたしもだいぶ鍛錬積んでるから、自分の身は自分で守れるし。ヒスイだって、ロゼッタさんだって、レヤーだっているし。何にも困ってないよ」
へへへ、と鼻をすすりたいのを我慢しておどけて見せた。