異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「あ、それよりさ!」
パン、とあたしは大きく手を叩いてヒルトに訊いてみた。
「バルドって、結構いい年なんだよね? そんな皇子様がいつまでも独り身だと問題アリじゃない? あたしのことよりさ、バルドが身を固める方が先じゃん。婚約者とか婚約者候補は……縁談くらいあるっしょ?」
「……主だった縁談は、隣国の公女や公爵令嬢がございますが」
ヒルトがため息を着きそうな顔で教えてくれて、渋々でも話を合わせてくれて感謝。
「ほら、ね? バルド、あなたはきちんとした相手と婚約しなよ。その方が絶対にいいって! もしも仮に皇帝陛下になるなら、皇后様はちゃんとした血筋の女性がいいでしょ?」
話しながら、胸にズキンズキンと痛みが走る。
(そっか……バルド……皇帝になる可能性もある皇子様、だったんだよね)
旅をしている時は割とワイルドな格好で、本当にどこからどう見ても無法者の旅人なんてイメージだったけど。第一皇子というなら、本来なら皇位継承第一位……つまり。皇太子になって、将来の皇帝陛下ってことになるんだよね。
国の、一番えらいひとになるんだ。
それを認識した瞬間、ズシンと全身に重石が乗ったような重さを感じた。
(いつまでも……そばにいられるわけじゃない……許されない立場なんだ)
そう考えて、何をバカなと自分で自分を叱りつけた。
(なにを考えてるの! そんなの当たり前でしょう。バルドはこの世界の皇子様。いずれあたしと別れ別れになるのは解ってたじゃない)