異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「オレは、都合のいい言い訳で逃げてただけかもしれないな。アイカがオレを選ばなかった……という現実から目を逸らすために」
いくらでも方法はあったはずなのにな、と自虐的に笑うバルドは。ちゃんと人間らしい顔をしてた。
アイカさんが、アイカさんへの想いが。彼をそうさせているんだ……って。身に染みて解る。
バルドがずっと無表情だったのは、彼が無感情だからじゃない。心を押し殺してたから。その必要があったから、そうせざるを得なかったんだ。
きっと、バルドは誰よりも情熱的にひとを愛せる。アイカさんを……最愛のひとを。
うらやましいな、と思う。だけど、きっとあたしにバルドからそんな想いを向けられることはない。きっと、彼にとってアイカさんは唯一無二の愛するひと。生涯かけて愛を貫ける、そんな情が深い人間なんだ。
「……うん、幸せをあきらめちゃだめ。ちゃんと、アイカさんに会って、話して。そのためなら、あたしは……身代わりの婚約者でもなんでもするから」
嫌だったけど、これしか方法はないかもしれない。皇子が人妻と会っても、婚約者がいれば変な疑いはかけられないだろうと思う。
なんで、あたしはバルドのことでこんなに必死になってるんだろう? その理由は解ってても、きっとあたしは認めない。認めちゃいけないんだ。