異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第11関門~それって、へ理屈のような。





……なんでこんなことになっているのか、誰か教えてください。


『では、お次は帝国史でございます』


三角フレームのメガネを煌めかせながら、ミス・フレイルがおっしゃってます。

彼女は薄茶色の髪をきっちりと頭上で結い上げ、紺色の尼僧服みたいな詰襟長袖のドレスを着てらっしゃいまして。つり上がった目は生真面目そのもの。生まれてから一度も笑ったことがないんじゃない? と思うくらいには、唇を固く引き結んでおられます。


実際、生き方は真面目そのもの。帝国の中流貴族に生まれた彼女は、いち侍女からバルド付きの女官長を務めるまで、20年間1日も休むことなく帝国のために働いているとか。


なぜ、ミス・フレイルの説明をこんなに詳しくしてるのかと言いますと……


彼女があたしの侍女長へと、配置替えをされたからです。


バルドの鶴の一声で……ですよ。


なんか仮でも婚約者なら、それ相応のたしなみや教養を身に付けろ、って。暗に粗野で粗忽な育ちを揶揄されてムカつきましたが。


で。


侍女長となった彼女は実際は教育係と言うべきもので、あたしの言動をいちいちチェックして、事細かに注意をされる。


ちなみに、あたしが帝国第一の公用語であるスタラストス語が苦手と知ると、スタラストス語以外一切使わなくなった。たどたどしく抗議すれば、習うより慣れろと言われた。……くくっ!


バルドの為に建てられた宮に移って1ヶ月。勉強漬けの毎日に、いつか何かがキレそうです。

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