異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「そういえば、セリナさんのことですけど」
でかすぎる体のせいで食堂に入らない、と床に敷いたゴザに座らされたレヤー。彼は壁の片隅で両膝を抱えながら、床に置かれた空のお皿を恨めしげに眺めてた。どうやら飼い犬に食べられたらしい。
「今日はミッツで聞き込みをしましたが、これといって手がかりはありませんでしたよ……あ、欠片が残ってました」
陶器のお皿を両翼で抱えながら、隅っこに残った粒を必死に舐めとるレヤー。あまりに涙ぐましくてあたしの分を分けたら、涙ながらに感謝された。
「あ、ありがとうございますうぅ……1日ぶりのご飯だったんですよう」
へこへこ、と頭を下げるレヤーの悲惨な食料事情はさておいて。彼には最近、芹菜と秋人おじさんについて調べてもらってる。
この世界に来た当初は自由に動けたあたしだけど、今はバルドの婚約者兼ヒスイの侍女って身の上。外出1つするにしても身軽に出歩けない。
だからといって2人の行方を調べるのを諦めるつもりはないし、そもそも個人的な事情だからバルドに頼むのも筋違い。自力で何とかしたいけど、使える手札が限られてる以上は頼める先は決まりきってた。
ロゼッタさんはあたしの警護を務めてる以上は動けない。なら、と白羽の矢を立てたのがレヤー。
多少不安要素はあるけれど、信頼できて自由に動けるのが今のところ彼しかいないんだ。
だから、レヤーはこのところ連日いろんな町に行って調べてもらってる。あたしがミニアルバムに入れてた写真を使って。