異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「やっぱないじゃん! あんたどこにやったのさ? まさか羨ましくて盗んだの!?」
義妹(とはいえ本当は従妹で同学年)のリカが不機嫌さを隠そうともせず、寝起きのままあたしに怒鳴り付けてくる。
(うらやましいはずないでしょ! あんたと違ってあたしのささやかな胸じゃサイズが合わないっての)
って言うか、通販で買った勝負下着。セットで2万円也のそれは、あたしが買わされた。バイト代が出る給料日を見越して、代引きなんてセコい手口で。
いつか返すとか言いながら、一体何回目だ? 総額にして30万はくだらない購入金額に、頭が痛くなる。
「おい、飯まだか!」
「はい、はい。今用意します」
義父が声を張り上げたから、ご飯をよそうためにキッチンに移動したのに、リカは不機嫌さを増して睨み付けてきた。
「ちょっと。アタシのブラはどうでもいいわけ?」
「後でまた見るから、先にご飯を食べちゃってよ」
「ち、めんどくせぇな」
舌打ちしたいのはこちらですってば、まったく。あたしはあなた方のオカンじゃありません。
ご飯を食べさせた後は洗濯物を干して食器を洗って、軽く掃除機をかけて……お弁当を持たせた2人を送り出したら。こちらもギリギリの時間! 慌ててエプロンを外し玄関を出る……前に。
部屋にある2つの写真に挨拶をした。
「お母さん、秋人おじさん……行ってきます」
しばらく見つめてから、名残惜しい気持ちを断ち切るように部屋を後にした。