異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



どんっ! と机に置いた2つのコップ。湯気が立つそれを見たバルドが、何かと顔をしかめた。


「……なんだこれは?」

「ん? 甘酒。栄養たっぷりで腹持ちがいいから、夜食がわりになるかと思って。あ、ヒルトさんのぶんもありますよ」

「……」


あ、あからさまにいやそ~な顔をしましたね、ヒルトさんは。そりゃ、初めて見る白くてどろどろな液体なんて不気味でしょうよ。粒々まで浮いてるし、甘ったるそうだし。


「だって、バルドもヒルトさんも毎晩毎晩遅いのに、朝早く出掛けなきゃいけないでしょ。少しでも栄養とって、疲れをとらなきゃ」

「……まさか、あなたの手作りですか?」


ヒルトさんが疑心暗鬼丸出しの顔でそうおっしゃってますが。


「そりゃ、もちろん。お米が手に入りましたから、作ってみました。あ、変なものは入ってないから安心して」


ストレス解消に、ってたまに厨房を借りていろんなものを作るんだよね。このあいだはおはぎ作ったし。


「殿下、こんな怪しげなものを口にする必要などありません」

「あ、失礼だなあ。あたしが信用できないっての!?」


1ヶ月一緒に暮らしている相手なのに、とさすがにムッときたあたしはバルドの前に置いたカップを手にすると、ひとくち喉に流し込む。


「ほら、大丈夫でしょ? 何ならヒルトさんの分も……?」


どうしてか目を丸くしたヒルトさんは、必死に首を横にふる。


「いいえ、結構です。私はこのままいただきますので……」


なぜか、ヒルトさんはカップを手に書類を脇に抱えて、挨拶もそこそこに部屋を出ていった。なんだか慌てたように見えるけど……なんだろう?


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