異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
トン、と置いた音が聞こえて振り向けば、バルドのカップが綺麗に空になってる。
あ、飲んでくれたんだ。とちょっと嬉しくなって顔が綻ぶ自覚はあった。
「どう、ご感想は?」
椅子に座ったバルドに前屈みになりながら訊けば、彼は顔をしかめて「甘ったるい」とおっしゃいました。
「そりゃ、お砂糖入れてるから仕方ないよ。けど、疲れには甘いものが一番だし。お茶よりよほど栄養たっぷりなんだよ」
「それでも、毎日飲めるもんじゃない」
げんなりした顔のバルドを見て、ちょっとカチンときたけど。もしかするとという考えがあって、お代わりをカップに注いであげた。
「はい、一杯飲めたならもう一杯飲めるでしょ?」
「……おまえ、わざとか」
「あ~ら、なんのこと?」
バルドは以前から、果物やお菓子類は食べなかった。お腹いっぱいだとか何だとか理由をつけて、あたしたちにわけてくれたけど。あたしの考えが当たっていれば……。
ほれほれ、と押し付けようとしたカップから逃げようとしながら、バルドは心底嫌そうな顔をしましたよ。
「あはは、皇子様が甘いもの大嫌いなんてね。みんなに知られたらイメージがた落ちだ」
今までのお返しとばかりに笑って差し上げましたよ。もちろん、盛大に声を上げてじゃないけどね。